カンプ/インターアルプ(CAMP/INTER-ALP)
 カンプ社はイタリア北部、コモ湖の近くにある山あいの町、プレマナ(Premana)に本拠地がある登山用品メーカである。この辺は昔鉄鉱石が採れたので製鉄が発達したらしい。カンプの前身の鍛冶屋も1800年代終わりに創業し、1920年には最初のピッケルを作ったらしい。現在のカンプはピッケルやアイゼンのような金属製品だけでなくテントやザックも扱う総合登山用品メーカに発展している。
 CAMPとは、イタリア語Costruzione Atticoli Montagna Premana(プレマナでの登山用品の製造という意味)の略であり、イタリア語読みでカンプと読む。英語のキャンプ(camp)とは意味がまったく違うようだ。
 一方インターアルプ社は登山用品の企画を専門にする会社であったようだ。1970年頃できた会社だったがカンプ社と合併したらしく現在は存在しない。
 カンプ社製造のピッケルは、当時日本ではインターアルプの名で販売していたがここではカンプとして分類しておく。

 
プレマナ遠景(出典;CAMPの製品カタログ1998年版)
カンプの工場遠景とその内部(同左)





モンテ・ローザ (Monte Rosa)
 カラビナホールのないモデルであり、1970年代に製造された物であろう。モデル名のMONTE ROSAはシャフトに貼られたラベルに記されている。
 ヘッド長29.3p、全長75p、重量は980gと重い。













ショイナード・フロスト (Chouinard-Frost)
 イボン・ショイナード(Ivon Chouinard)とトム・フロスト(Tom Frost)という有名なアメリカの二人の登山家の名前を冠したモデルである。当時(1970年頃)としては極端なほどにピックのカーブがきつい画期的なモデルであった。ヘッド長29.0pでブレードがフラットである。









センチネルルージュ (E;Sentinel-rouge, F;la Sentinelle Rouge)
 ヘッド長28.5p。ブレードはカップ型で材質はニッケル・クロム・モリブデン鋼。センチネルルージュ(赤い番兵)はモンブランのブレンバ側(イタリア側)下部にある岩峰の名前。












同じ形のセンチネルルージュでも後期の物は刻印が異なった。CAMPの刻印が新しくなり、ヘッド背面にはPREMANAが追加された。



カンチ (Kangch)
 モデル名のカンチとはネパールヒマラヤの高峰カンチェンジュンガ(Kangchenjunga、8586m)の略称であり、これはその名の通り遠征用として作られた極めて特異な形状をしたピッケルである。ピックが途中でばっさりとカットされていていかにも氷を砕くためのピッケルという感じがする。材質はニッケル・クロム・モリブデン鋼、ヘッド長は26.0p、1960年代後半製造の物と考えられる。










センチネルルージュとの比較


このモデルはその後モデルチェンジしてピックがさらに短くなった。[1975年刊「世界の登山用具」(参考文献6-3)]



ベルニナ (Bernina) [Presented by Ross Mellows, Thank you Ross]
 これはシャフトがウッドからメタルになりつつある頃、1970年代のピッケルである。ヘッド長は27.0pで梨地仕上げの上にメッキ処理がされている。シャルレ・モンブランに似た穴とスリットがブレードとピックに明けられている。ブレードの穴は他のピッケルと連結するためのものであるがピックのスリットは軽量化のためのものと思われる。
 このピッケルは、イギリスのストーブ収集家、ロス・メローズ氏が使っていた物をプレゼントしてくれた物である。